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 金子兜太百句を読む 池田澄子

 人体冷えて東北白い花花盛り     句集『蜿蜿』
                          
池田 これも私はざわざわしちゃうんですね。最も好きなうちの一つです。

金子 これは長谷川櫂が、いい評論書いてくれてましたねえ。イギリス人が書いた何かの本に出てたな。

池田 これは「華麗な墓原」ほどドロドロしてない。

金子 あれほど
ドロドロしてないね。ドロドロした部分を取り入れてませんね。

池田 これも寒くて。こちらは作者の場所の設定は、家の中じゃないんですね。

金子 そのとおりです。

池田 ですよね。ですけど私は「人体冷えて」というのを布団の中にも感じます。

金子 ああ、はあはあ。

池田 布団のなかでもまだ寒いっていうようなね。そういう部屋の中の、布団が敷いてあって、それでも寒いっていう「人体冷えて」をね、この句から先ず感じて。でも先生が詠まれたのは本当は、発想源の事実はそういうのじゃなくって。

金子 津軽のちょうど早春の頃の農耕者の姿。

池田 そうなんですよね。外で描かれてるんですよね。でもまあ勝手にそう読ませていただいても別に構いませんね。

金子 構いません。それから今は若い人たち、櫂なんかも確かそういう読みしでかと思いますが、津軽っていうものの限定を彼らはしないですね。日本列島全体が冷えてるって感じ。「人体冷えて」は日本列島の人間たちがみんな冷え冷えとしてる。そして、東北だけが白い花がぽかっと咲いてると。なにか日本列島の映像。日本列島に春が来る映像、そういう映像として、綺麗な映像、もの悲しい映像として読むようですわ、若い人たちは。

池田 日本の北の方の東北、そこが寒いことが大事なんじゃないのですか?

金子 うん、東北が大事なんでね。東北の方にぽかっと白い花が咲いてるってだけの映像じゃないんだ。作った現場が現に津軽だからね。
津軽まで行った。その途中の汽車からもずーっと白い花が見えている。そのうち重なってきてる、白い花が。そして津軽に降りると農民の大たちが頬被りして、寒そうにしてた、そういう風景ですからね。津軽の風土を詠んだつもりなんですけどね。今の若い大は違うようだ。

池田 そうですか。東京はぽかぽかしていても、だんだん北へ行って、そこ、東北がそういう状況だと私は読みたいです。寒くて、そして白い花がね。

金子 そういう経緯で作ったです。途中の花が白がどんどん増えていくというのが非常に印象的だったんですよ。向こうに行くと季節が終わりになりますからね。梅の花も林檎の花も。桜も一緒になるぐらいだな。だから今の人の映像はちょっと違ってきてる。ただイメージとして捉えてますね。津軽なんかどうでもいいっていう。でもどっちに読んでも冷え冷えと深まる句。綺麗すぎるかな。

池田 作者の思いは、津軽、東北という寒い処に、濃いように感じます。

金子 ええ、ええ、そのとおりです。